複数の海外FX業者を使うと確定申告はどう変わるか
XMとExnessを併用している。FXGTにもサブ口座がある。こういうトレーダーは珍しくない。複数業者を使う理由は人それぞれだ。スプレッドの有利な業者を通貨ペアごとに使い分ける人もいれば、ボーナス目当てで複数口座を持つ人もいる。
問題は確定申告だ。1社だけなら取引報告書を1枚取って終わりだが、2社、3社と増えるとやることが増える。ただし、基本の考え方はシンプル。海外FX業者の利益はすべて「雑所得」という同じ箱に入る。同じ箱の中だから、業者をまたいで利益と損失を相殺できる。これが損益通算だ。
裏を返せば、業者が違っても税率は変わらない。XMの利益もExnessの利益もFXGTの利益も、全部合算して累進税率が適用される。別々の箱に分かれるわけではない。この点をまず押さえておけば、あとは手順の問題にすぎない。
海外FX同士の損益通算ルール
海外FXの利益は所得税法上、「雑所得」に分類される。総合課税の対象だ。これはどの海外FX業者を使っていても同じ。だからXMで利益が出て、Exnessで損失が出たら、その差額が課税対象になる。
通算の基本ルール
やることは足し算と引き算だけだ。
| 業者 | 年間損益 |
|---|---|
| XMTrading | +80万円 |
| Exness | -30万円 |
| FXGT | +20万円 |
| 合計(課税対象) | +70万円 |
80万円に丸ごと課税されるのではなく、Exnessの30万円の損失を差し引いた70万円が課税対象。損をした業者がある場合、その分だけ税金が軽くなる。バケツに水を注ぐ作業に似ている。3つのバケツから1つの大きなタンクに水を移す。1つのバケツが空だった(損失だった)としても、タンクの水量(課税額)はその分だけ減る。
通算可能な取引の範囲
海外FXの雑所得として通算できるのは、為替差益だけではない。以下の取引も含めて合算する。
- 為替差益(通常のFX取引の利益・損失)
- スワップポイント(受取・支払とも)
- CFD取引の損益(株価指数・商品・仮想通貨CFDなど)
- ボーナスを使った取引で得た利益
注意が必要なのは、ボーナス自体は課税対象にならない点だ。XMの口座開設ボーナス13,000円は受け取っただけでは所得にならない。ただし、そのボーナスで取引して得た利益は課税対象になる。
国内FXとの損益通算はできない
ここが最大の落とし穴だ。海外FXと国内FXは税区分が違う。混ぜることはできない。
| 区分 | 海外FX | 国内FX |
|---|---|---|
| 所得の種類 | 雑所得(総合課税) | 先物取引に係る雑所得等(申告分離課税) |
| 税率 | 累進課税(15%〜55%) | 一律20.315% |
| 損益通算 | 海外FX同士のみ | 国内FX・先物同士のみ |
| 損失繰越 | 不可 | 3年間繰越可能 |
たとえばXMで+50万円、DMM FXで-30万円だったとしても、課税対象は50万円のまま。国内FXの損失は海外FXの利益からは引けない。逆もしかり。国内FXで+100万円、XMで-40万円でも、国内FX分の100万円に丸ごと20.315%がかかる。
油と水が混ざらないのと同じだ。同じ「FX」という名前がついていても、税法上はまったく別の生き物として扱われる。国内FXで損失が出ているなら、それは国内FXの先物取引等の損失繰越として翌年以降3年間に持ち越す。海外FXの利益にぶつけることはできない。
各業者の取引報告書(MT4/MT5)の取得方法
確定申告には各業者の年間取引報告書が必要だ。MT4でもMT5でも手順はほぼ同じ。ただ、メニューの名前が微妙に違うから、それぞれ説明する。
MT4での取引報告書の出力手順
- MT4を起動してログインする
- 下部の「口座履歴」タブをクリック
- 口座履歴エリア内で右クリック →「期間のカスタム設定」を選択
- 開始日を「2025年1月1日」、終了日を「2025年12月31日」に設定(2025年分の申告の場合)
- 再度右クリック →「詳細レポートの保存」を選択
- HTML形式のファイルが保存される
保存されたHTMLファイルには、取引ごとの損益、スワップポイント、手数料がすべて記載されている。「Closed P/L」(決済済み損益)の合計が、その業者での年間損益だ。
MT5での取引報告書の出力手順
- MT5を起動してログインする
- 下部の「口座履歴」タブをクリック
- 口座履歴エリア内で右クリック →「期間指定」を選択
- 開始日と終了日を対象年の1月1日〜12月31日に設定
- 右クリック →「レポート」→「HTML」または「Open XML(Excel)」を選択
- ファイルが保存される
MT5のOpen XML形式を選ぶとExcelで開ける。数字の確認や集計がしやすいから、複数業者を使っている人にはこの形式がおすすめだ。
業者別の注意点
| 業者 | 対応プラットフォーム | 取引報告書の注意点 |
|---|---|---|
| XMTrading | MT4 / MT5 | 会員ページからも月次レポートをダウンロード可能 |
| Exness | MT4 / MT5 | パーソナルエリアから取引履歴のCSV出力も可能 |
| FXGT | MT5 | MT5からの出力が基本。クライアントポータルでも確認可 |
取引報告書は確定申告書への添付義務はないが、税務署から問い合わせがあった場合に提示が必要だ。最低5年間は保管しておくこと。紙で保管してもいいが、PDFにして年度別・業者別のフォルダに整理しておくのが現実的だろう。
確定申告書への記入方法
複数業者を使っている場合、確定申告書の雑所得欄に業者ごとに分けて記入する。1行にまとめてもルール上は問題ないが、分けて書いた方が税務署の心証がいい。取引報告書との突き合わせもスムーズになる。
確定申告書B 第二表の雑所得欄への記入例
| 種目 | 所得の生ずる場所 | 収入金額 | 必要経費 |
|---|---|---|---|
| FX取引 | XMTrading(Tradexfin Limited) | 800,000円 | 40,000円 |
| FX取引 | Exness(Exness (SC) Ltd) | -300,000円 | 20,000円 |
| FX取引 | FXGT(360 Degrees Markets Ltd) | 200,000円 | 15,000円 |
「所得の生ずる場所」には業者の法人名を書く。XMならTradexfin Limited、ExnessならExness (SC) Ltd。業者の公式サイトや利用規約に法人名が載っている。正式名称を書いた方が丁寧だが、通称でも受理される。
損失の業者は収入金額にマイナスで記入する。最終的な雑所得の金額は、全業者の収入金額合計から必要経費合計を引いた額。上の例だと、収入合計70万円−経費合計75,000円=625,000円が雑所得の金額になる。
e-Taxでの入力手順
e-Tax(確定申告書等作成コーナー)を使う場合は、雑所得の入力画面で「もう1件追加」ボタンを押していけば、業者ごとに複数行を追加できる。入力が終わると自動で合算してくれるから、手計算のミスが減る。
XMなら口座開設ボーナスで入金なしからスタートできる。まずはメインの業者を1社固めてから、サブ業者を追加していくのが管理しやすい。
XMの口座を開設する →損失が出た業者がある場合の通算計算例
損益通算のメリットが最も効くのは、一部の業者で損失が出ているケースだ。具体的な計算例を3パターン見ていく。
パターン1:2社利用で片方が損失
| 業者 | 年間損益 |
|---|---|
| XMTrading | +120万円 |
| Exness | -50万円 |
| 通算後の課税対象 | +70万円 |
通算しなければ120万円に課税されるところ、Exnessの損失50万円を差し引いて70万円になる。仮に所得税率20%帯であれば、50万円×30%(所得税20%+住民税10%)=約15万円の節税効果だ。通算を忘れて120万円のまま申告すると、その15万円は丸損になる。
パターン2:3社利用で2社が損失
| 業者 | 年間損益 |
|---|---|
| XMTrading | +200万円 |
| Exness | -80万円 |
| FXGT | -40万円 |
| 通算後の課税対象 | +80万円 |
200万円が80万円に圧縮される。損失業者が複数あっても、全部まとめて引ける。120万円分の損失通算で、所得税率20%帯なら約36万円の節税になる。
パターン3:全業者で損失(合計がマイナス)
| 業者 | 年間損益 |
|---|---|
| XMTrading | -30万円 |
| Exness | -20万円 |
| 通算後 | -50万円 |
全業者合計でマイナスなら、海外FXの雑所得はゼロ。税金はかからない。ただし、国内FXと違って損失の繰越控除は使えない。この-50万円を翌年に持ち越して翌年の利益から引く、ということはできない。その年限りでリセットされる。海外FXの税制上、これはかなり不利なポイントだ。
経費の按分方法
複数業者を使っていると、経費の振り分けが少しややこしくなる。業者ごとに経費を分けるのか、まとめて計上するのか。基本的な考え方を整理しておこう。
経費の分類
| 経費の種類 | 按分の考え方 |
|---|---|
| VPSサーバー代 | 各業者のEAを稼働させている場合、取引割合で按分。1社だけなら全額その業者に |
| EA(自動売買)購入費 | 使用している業者に直接紐付けて計上 |
| FX関連書籍・教材 | 特定業者に関係するものはその業者に。一般的なFX書籍は取引割合で按分 |
| インターネット回線代 | FX取引に使う割合で按分(通常20%〜50%程度) |
| PC・モニター | FX取引に使う割合で按分。10万円超は減価償却の対象 |
| セミナー・講座代 | 内容に応じて業者に振り分け。一般的な内容なら取引割合で |
実務上、経費を業者ごとに厳密に按分する必要はない。雑所得は最終的に合算されるため、経費の配分が変わっても合計の所得額は同じだ。ただし、確定申告書に業者ごとの収支を書く場合は、対応する経費もそれぞれに割り振っておくと整合性が取れる。
按分の実際の計算例
年間のVPS代が36,000円、XMとExnessの2社で使っているとする。XMの取引回数が全体の70%、Exnessが30%なら、VPS代はXMに25,200円、Exnessに10,800円と振り分ける。取引回数ではなく取引金額の比率で按分しても構わない。合理的な基準であれば税務署に突っ込まれることはない。
面倒なら経費は全業者をまとめて1行で計上し、確定申告書には「経費内訳」として別紙を添付するという方法もある。国税庁の確定申告書作成コーナーでは、経費の内訳を自由記述で入力する欄がある。
実際の確定申告の流れ(複数業者版)
複数業者の確定申告を時系列で整理すると、こうなる。
ステップ1:各業者の取引報告書を取得(1月〜2月)
年が明けたら、使っている全業者のMT4/MT5から前年分の取引報告書を出力する。1月1日〜12月31日の期間を正確に設定すること。年末にポジションを持ち越している場合、未決済の含み益・含み損は申告対象外。決済した取引のみが対象だ。
ステップ2:業者別の損益を集計する
各業者の「Closed P/L」(決済済み損益)を確認する。スワップポイントの損益も忘れずに加算する。取引手数料(XMのZero口座など)が差し引かれている場合は、それも経費に含められる。
ステップ3:経費を整理する
年間でかかったFX関連の経費をリストアップし、業者別に振り分ける。領収書やクレジットカードの明細を元に集計する。
ステップ4:確定申告書を作成する(2月16日〜3月15日)
e-Taxまたは書面で確定申告書を作成する。雑所得の欄に業者ごとの収入金額と必要経費を入力。合算された所得額に対して、給与所得と合わせた総合課税の税率が適用される。
ステップ5:取引報告書と経費の領収書を保管する
提出義務はないが、税務調査や問い合わせに備えて5年間は保管する。業者ごとにフォルダを分けてPDFで保存しておけば、必要なときにすぐ出せる。
よくあるミスと対処法
複数業者の申告で実際に起きやすいミスをまとめておく。自分がハマる前に知っておくことで、余計な手戻りを防げる。
ミス1:損失業者の申告を忘れる
利益が出た業者だけ申告して、損失が出た業者を無視してしまうケース。これは純粋に損だ。損失分を通算すれば課税額が下がるのに、その恩恵を捨てていることになる。損失がある業者こそ、忘れずに申告に含める。
ミス2:国内FXと海外FXを混ぜて申告する
国内FXの損失を海外FXの利益から差し引いて申告してしまうケース。税務署から修正を求められる。最悪の場合、過少申告加算税が発生する。国内FXは「先物取引に係る雑所得等」の申告書別紙(第三表)に記載し、海外FXは第二表の雑所得欄に記載する。場所が違うから間違えにくいはずだが、e-Taxの入力画面では注意が必要だ。
ミス3:取引報告書の期間設定が間違っている
MT4/MT5の口座履歴で期間を「全履歴」にしたまま出力してしまい、過年度の取引も含まれてしまうケース。必ず申告対象年の1月1日〜12月31日に設定してから出力する。
注意:このガイドの前提と限界
この記事は2026年5月時点の税制に基づいている。海外FXの税区分が将来変更される可能性はゼロではないし、確定申告書の様式も改訂されることがある。また、業者ごとの取引報告書の出力手順はプラットフォームのアップデートで変わることがある。
取引金額が大きい場合や、仮想通貨CFDなど複合的な取引がある場合は、海外FXの税務に詳しい税理士に相談することを勧める。年間の取引報告書と経費の一覧を持参すれば、1時間程度の相談で申告書の作成指針が得られるはずだ。
FX Rescue編集部では、国税庁公表の所得税法における雑所得の取扱い、および「先物取引に係る雑所得等」との区分に基づき、海外FX業者間の損益通算ルールを確認しています。MT4/MT5の取引報告書の出力手順は2026年5月時点の各プラットフォームに基づいています。税制改正により取扱いが変更される場合があります。